今日の熱ハロで私の話を聞いた未来のライバルたちへ

私が所属する(一社)鴨川青年会議所の発案から始まって、ここ数年、市内の中学校で職業座談会のようなものを開催しています。当初は「情熱ハローワーク」という名前でJCメンバーが各学校に乗り込み、自分の職業について熱く語っていたのが、会議所の手を離れ、各学校に根付きつつある事例。前回(昨年11月)は、不肖私も鴨川中にて話をさせていただきましたが、今日は長狭学園でも機会を得まして、6年生・7年生を対象に、自分の職業について話をさせていただきました。5班のみんな、読んでくれてるかな?

さて、自分でもちょっと大人げない感じになっちゃったかな、と反省しつつも、今日言った「一市独占」「死ぬまでこの仕事をしたい」というのは嘘偽りではなく、本心で考えていることです。何をもって「独占」とするかは今のところ考え中だけど、いろいろ作戦は練っています。

今回特にウィルス・セキュリティに関して結構突っ込んだ質問を受けたので改めて書くと、今日も話した通り、ある調査によれば昨年2014年だけで、3億1,700万のマルウェア(コンピュータウィルスを含む、悪さをするプログラム)が発生しています。(Nearly 1 million new malware threats released every day by CNN) 検知されているだけでこの数なので、実際にはもっとあるかもしれない。

そして、現状出回っている大半のウィルス対策ソフトというのは、ネットからダウンロードしたファイルやメールに添付されたファイル、USBメモリに入っているファイルについて、既知の、つまり今まで検知されたマルウェアと同一のファイルかどうかをチェックしていて、もし同一だったら警告して隔離、あるいは削除する、という手法を取っています。

ひとつだけ救いなのは、新しいマルウェアの大半(90%近く)は、システムのかなり古い脆弱性(=弱点)をついて感染するようになっている、ということ。つまりコンピュータの電源を切るとき「更新プログラムをインストール中…(◯個中◯個目)」って表示される、アレを適用していないと、そこを突かれるわけです。なので、更新プログラムが出ていたら面倒でもマメに当てておいてください。

でも残りの10%はどう防ぐか? 有効な手立ては、残念ながら、ない、というしかない。なんといってもウィルス対策ソフトの大手企業の人が去年「ウイルス対策ソフトは死んだ」と宣言しているくらいなので。

では、そういう絶望的な状況の中でお前はどうしているのか、仮にもプロとしてメシ食ってるやつはどんな対策取っているんだ、そこんとこ教えろや(゚Д゚)ゴルァ!、というのが、たぶん5班のみなさんが聞きたかったところなんだろうと思います。

率直に言うと、弊社、つまり高梨が普段使っているパソコンのOSはWindowsやMacではありません。Linuxという、フリーのOSを使っています。ここからかなりオタクな内容になるので、ヒマがあったら読んでください。

この「フリー」の意味には2つあって、まず、「無料」という意味でのフリー。もう一つは、ソースコードが公開されていて、好きなように改良でき、改良した成果を世界中のユーザーと共有できる自由さがある、という意味でのフリー。Linuxについての解説はネットに山ほどあるので、ぐぐってください。

私がLinuxを使い始めたのは確か大学2年(1996年)だったから、もう20年近く使ってることになります。今でもg5121272(私の大学時代のアカウント)で検索すると、当時の私が初心者くさい質問をメーリングリストにしているのが、発掘できます。

当時マイクロソフトから出てたWindows95ってOSがまたひどくてね。(笑) フリーズしまくるわ起動しなくなるわ、友達が買ったパソコンに何度再インストールしにいったことか。

私自身もしばらくはWindows95使ってたけど、あまりの完成度の低さに辟易としてました。

そうこうするうち、パソコンで動くUNIXがある、しかもタダ!っていう噂を聞きつけ、インストールしてみたわけです。当時は情報量も少なかったし、Google先生もなかったので、分厚い書籍を秋葉原で買って、四苦八苦しながら使い始めましが。

で、一応自分のしたいこと(Webブラウジング、文書作成など)がLinuxできる環境が構築できた時点で、自分の中で一大決心をしました。「もうWindowsは捨てよう。俺はLinuxで生きていこう」と。

今から考えると、職業エンジニアとして生きる第一歩はそこだったのかもしれない、と思います。

話が前後するけど、私が通っていた大学は、文系学部しかない割には、IT教育について、そこそこ先進的でした。1年のときに、希望者を対象に「インターネット講座」のようなものを開いてくれて、電子メールの使い方を、そこで習ったんだよね。で、カナダに留学していた友達に英語で(当時日本語でメールを書くとかなりの確率で文字化けしたので)メールを送ったら、その返事が20分で返ってきた!

「なんだこれは!?」って思いました。外国のできごとが衛星中継されてテレビで見れるのは、理解できる。だってそれは俺だけじゃなく、他のみんなにも同じ電波で一斉に放送してるから。でも、普通の学生がこれまた普通の学生にあてて打った電子文章が、20分で太平洋を超えて返ってくる!?こりゃいったいどういう魔法なんだ?

今でこそメールやLine、Skypeなんかでリアルタイムに連絡が取れるのが当たり前になってるから、何を不思議がるのか、想像できないかもしれない。でも、当時の私にはまさに衝撃でした。そして、このインターネットというものの裏側で働いている仕組みを、どうしても、なにがなんでも理解したい、と思った。

幸いLinuxというOSは、その仕組みを知るのに格好の教材であることがわかりました。なぜって、今でもそうだけど、インターネットで動いているサーバの大半はLinuxで動いているから。

実を言うと、ガラケーの一部、また全てのAndroidスマホではLinuxが動いてます。日本が世界に誇るスーパーコンピューター京もLinux。

じゃあなぜLinuxがWindowsや他のOSと比べて安全なのか。いくつか理由はあります。

まず、ソースコード、つまりプログラムの元が公開されているので、バグが見つかったら世界中の腕っこきプログラマがよってたかって修正できる点。WindowsやMacOSのソースコードは、営利企業の最重要機密情報なので、どう逆立ちしても真似できません。

もう一つは、PCにインストールしている人の数が少ない、つまりシェアが微々たるものなので、攻撃を狙う者にとってあまり魅力がない点。同じ苦労をするならWindows用のものを作った方がはるかに効率がいいってことです。

もう一つは、先ほども書いたように、Linuxは24時間365日稼働するインターネットサーバとして動作しなければならないOSなので、各種セキュリティ対策は、元々高く作られている点。Windowsでウィルスにかかったら被害者として泣けばいいけど、Linuxのシステムに侵入を受けたら、それはユーザーや管理者の方がかなり間抜けなことをした結果と考えても差し支えない。

じゃあ、無料で、セキュリティも高くて、おまけにインターネットの勉強もできる、いいことづくめの夢のようなLinuxをなぜみんな使わないのか?

泣き所は、やはりシェアの少なさ、です。

例えばネトゲなりなんなり、ソフトを開発する立場になったとする。Windows用に作ればそこそこ売れるかもしれないけど、Linux用のを作っても売れる本数はたかが知れてるよね。ウィルス作成者にとってLinuxが魅力的でないのと全く同じ理由で、有益なソフト開発者にとってもLinuxは魅力的じゃないんです。

でも、状況は変わりつつあります。

一つには、今、Webブラウザさえ動けば買い物やSNSはもちろん、年賀状の印刷発送まで、ほとんどの用が足せるようになりつつあること。私はゲーム事情は疎くてわからないんだけど、おそらくオンラインゲームもFlashなりブラウザの中で動かせるようになってきてるんじゃないだろうか。

以前は泣き所だったOfficeスイート、つまりWordやExcelのような事務用ソフトも、そこそこ互換性を持ったフリーソフトがでてきているし、ちょっといいパソコンを買えば、Linuxの中のアプリケーションとしてWindowsを動作させることもできる。普段のネットの用はLinuxで済ませて、どうしてもWord/Excelデータを扱わなければならないときだけWindowsを立ち上げる、ということもできなくはない。動作はちょっと重くなるけど、うちは現にそうしてます。

個人ユーザーが家庭でするようなこと、インターネットでの調べもの、買い物、YouTubeを見たり、メールをやりとりしたり、たまに簡単な文章を作ったり、ということは、今のLinuxでも十分できるようになってきている、という状況を踏まえて、去年のWindows XPサポート期限問題の当時、鴨川周辺の、普通のパソコンユーザーの方にLinuxを使ってもらおう、という企画を、仲間と行いました。

キタ(゚∀゚)コレ! 鴨川からLinux始まるっぺ!説明会やんよ!

来てくれたのは、本当に普通のパソコンユーザー。高齢の方も多数いました。

それから1年経った今年の4月に利用者アンケートを取ったんだけど、8割以上の人がそのまま使いつづけていてくれていました。つまり、普通のWindowsユーザーがLinuxを使っても、さほど不自由を感じることはなさそうだった。

なかなか私も忙しい身なので、この人たちのフォローをしたり、うちの会社が全国に名を馳せた(?)フリーソフト「きゃぷる☆しゃべる」のサポートといった、すぐお金にならないことは後手に回しがちなんだけれども、ユーザーさんから応援や感謝のメッセージをいただけるのはやはり嬉しいし、もちろん地元の方ともお付き合いさせていただく中で、面と向かって「ありがとう!助かったよ!」と言ってもらえるのも嬉しい。その上お金をいただけるんなら、こんなにいいことはないよね。

こんなやりがいのある仕事なんだから、欲張り、というより誇大妄想と思われるかもしれないけど、独占したいんです。少なくとも私が住んでいるこの鴨川市に関しては。人口4万に満たない鴨川市くらい、うちで独占させてくれたっていいじゃない?みんなに「ああ、コンピュータのことなら、高梨に任せとけば安心だ」って思ってもらえたときが、独占達成なのかな、とこれを書きながら思い始めました。

でも、将来あなた達が、今日私の話を聞いてくれた長狭学園の生徒さんたちが、将来鴨川に帰ってきて、私と同じ仕事を始めるというのなら、今日も言った通り「受けて立ちます」。なにせ移り変わりの激しいこの業界のことなので、いつまでも古株が安穏としてられる保証なんて全くない。新規参入の機会はいくらでもある。正直に言って、私はあなたたちのことが怖くてならない。「おいおい高梨のじいさんまだあのおっそい電子式コンピュータにしがみついてるらしいぜ?しかもソースコード手書きしてるんだと。もう量子コンピュータのAIがなんでもやってくれる時代だってのに、遅れてるよなー」なんて馬鹿にされる日も来るかもしれないね。そうなったら、願わくは、あなたたちの技術話を片隅でいいから聞かせてやってください。

3 Comments

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高梨 様 こんにちは 

Linux をこれから学びたいと考えている初心者にとって、何かお勧めの本や勉強法がありましたら、お教えくださいませんか。

一昨年も昨年も今年も・・・毎年、猛暑が当たり前ですが、やはり、暑いですねぇ。
どうぞ、お体大切に!

赤い椿白い椿 さん お返事遅くなりました。いつもきゃぷしゃべのサポートありがとうございます。

Linuxを勉強する方法ですか・・・。今は田舎の書店にさえLinux関係の書籍・雑誌が置いてありますし、なによりGoogle先生がいますから、いくらでも勉強方法はあると思います。

とりあえず、不要なPCにインストールしてみて、何か問題があったらぐぐって対処、ですかね。Linuxの仕組みを体系的に学びたいということでしたら、UNIX関連の古本もいいと思います。基本的には書店でお好きなものを選ぶの一番ですが、ナツメ社の「実用UNIXツールハンドブック」は、私が学生のとき、学校のシステム(IBM AIX)で遊び、学び、していたとき大変参考にしました。版も重ねていて良書だと思います。Windowsはこの手の「仕組みを教えてくれる本」があまりないのですが、Linux/UNIXはたくさんあります。

高梨 様 こんにちは

お忙しい折、お返事ありがとうございます。アドバイス感謝いたします。

サポートなどと・・・大変恐縮いたします。こちらが勝手にお邪魔しております。

毎年毎年の猛暑。今年は、年齢を重ねたせいか? 特につらく感じております。

どうぞ、お体大切に! 夏を乗り切ってください。

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