言語学という学問について

数学や物理学、生物学という学問の名前なら、みなさん一度は聞いたことはあるでしょう。でも、「言語学」という学問についてはどうでしょうか?非常にしばしば、いわゆる「語学(特定の外国語を話せるようになるための実学)」と混同されるのですが、実は似ているようで異なります。

なんでこんなことを書いているかというと、昨日書いたように私がいろいろな外国語を学んでいる理由として、一つにはこの言語学のフィールドワークという意味があるからです。普遍文法というものがもしあるならそれを発見してみたいのです。

先ほども述べたように、言語学は語学ではありません。私が学生のときに籍を置いていたのは、「外国語学部英語学科」であり、「外国文学部英文学部」ではないのです。どういう違いがあるかというと、前者は英語という言語そのものについての研究をする(英語はどのように成り立ってきたか、シェークスピアの時代と現代英語はどう違うか)のに対し、後者は英語で書かれた文学作品について論じる学問(シェークスピアがあれほど様々な社会階層で使われていた用語に通じていたのはなぜか)であるということです。

で、長々と前置きしましたが、この言語学という分野、見方によってはこれからかなりアツいんではないかと思い、紹介してみたいと思いました。

話をわかりやすくするために端的な例を挙げましょう。

人間は今までいろいろな種類の機械を作ってきました。地面を走るもの、空を飛ぶもの、計算を瞬時にこなすもの、音楽を流すもの、映像を見せるもの、部屋を温めるもの、逆に冷やすもの、などなどなど・・・。ですが、未だに実現していないのは「言葉を話す機械」です。急いで付け加えておきますが、ここでいう「言葉を話す機械」とは、話し相手の言っている意味を理解し、相手や場に即した受け答えができるもののことです。

確かにそれに近い真似事をするロボットはあります。人の接近を感知し「いらっしゃいませ」と話しかける機械もあるにはあります(そしてそのような自動販売機の方が「人間より愛想がある」という理由で好んで買う人もいることも知っています)。が、それは人間相手の「会話」からはほど遠く、せいぜい少し賢いテープレコーダーといったところでしょう。

今のところ、計算機に自分の思う仕事をさせるには、人間のほうが機械に合わせて命令を書く必要があります。私が言っているのは、もちろん各種プログラミング言語のことです。そして、プログラマーが職業として成り立っているのは、この機械用の言葉を曲がりなりにも操れるからに他なりません。

さて、ここで言語学の研究が十分進んでいれば、人間の言葉を機械の言葉に翻訳するのはきっと訳もないことでしょう。残念ながらそうなっていないのは、言語学者の怠慢というよりは、そもそもこの分野が「哲学」と呼ばれるすべての学問の母親から最近独り立ちしたばかりの学問だから、という理由に依ります。

ですが、言葉を話す機械こそ生まれていないものの、世の技術者はこのよくわかっていない言語というものに対してかなりよく対応していると思います。かな漢字変換システム然り、検索エンジン然り。実際、形態素解析なんかさせてみると、言葉を話す機械まであともう少し、という気にさせられます。

ただ、熱力学の法則のような物理学的に普遍的な法則が、蒸気機関の熱効率を研究しているときに発見されたように、言語学に普遍的な法則が、逆にITの分野から見つかるかもしれません。いずれにせよ、言語学とITは十分役に立ち、かつ私の知る限り最もお金にもなりそうな組み合わせです。

Got Something To Say:

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

Copyright © 2024. Powered by WordPress & Romangie Theme.