顧客満足度は意外に簡単に得られる、と思う。

ちょっと前の話になりますが、日本を代表する自動車メーカーの車がアメリカで不具合を起こし(これも結局本当だったのかあやふやですが)、社長が記者会見を開き釈明していたのをテレビで見ました。きっとご記憶の方も多いと思います。で、その社長が「(当社は)これからも『お客様第一主義』でやっていきます」と言っていたのですが、この規模・実力の企業にしては、なんだか低レベルな目標だなぁとずっと思っていました。

理由は主に二つあります。

一つには「それを言うなら『お客様の生命第一主義』だろ」という点です。もし私が自動車を作る立場だったとして、走行に危険な仕様変更を依頼されたら、たぶん断ります。それで不興を買ってでも、市場ニーズがあることが分かっていても、です。もちろんそのメーカーも同じでしょうが、当の件は自社製品の安全性が問題視されていたのですから、「一に安全、二に安全、三四がなくて五に顧客満足度」くらいのことを言って欲しかった。「お客様第一主義」なんて、その辺の、頭を振ればカラカラと音がしそうな社長さんたちだって言っていることです。

もう一つは、「お客様第一主義」を「顧客満足度第一主義」と読み替えたとして、そんなものを得るのは大して難しいことではない、という点です。私はこの商売を始めてもう5年になりますが、おつきあいさせていただいたほぼ全てのお客様から「ありがとうございました。」「助かりました。」と言っていただいています。正直に言えば、一件だけ、喧嘩別れというか、どうしてもご満足いただけなかったことがありました。こちらとしてはできる限りの誠意を尽くしたつもりでしたが、結局「今回の件でお金はいただきませんが、以後のお取引はお断りさせていただきます」という結果に終わってしまったことがあります。親父の言によれば「お金をもらわないのならお客じゃない」とのことなので、そう考えれば弊社の顧客満足度は今のところ100%を維持しているといってもいいかもしれません。スケジュールは度々遅れ、見積りはすぐ出さず、挙句安くないお金をいただいているにも関わらず、です。

なぜそうなのかは自分でもあまりよく分かっていませんし、地元の人間であることや私一人でやっていることをご存じなので、大目に見てもらっているんだろうな、とも思います。

ただ一つだけ思い当たるとすれば、ちょっと言葉は悪いですが、弊社はお客様を「差別」しているからかもしれない、ということは言えます。「差別」というのは「この人はお金を沢山くれそうだから、優先しよう」とか「この人は有力者だから丁重に接しよう」ということ、ではありません。

そうではなく、「これが今使えなかったら、この人はどれくらい困るだろう」ということを考えて優先度を決める、ということです。例えば、趣味や遊びでたまにインターネットをやる人から依頼を受けた後に、仕事でコンピュータを24時間動かさなければならない人から依頼を受けたとして、これを時系列順に対応したりはしない、ということです。同じ仕事で使っている人の中でも、今動かないと困るのか、明日の夜までに動けばいいのかにもよってもまた違います。前者には「ちょっと別のお客様で急を要する件が入ってしまいまして…。」とご説明した上で、後者を先に対応します。いや、正直なところ、今日動かさなくてはならないコンピュータがありすぎて、後でできるものは後回しにせざるを得ないというのが実状です。幸い、主に都内から請け負う仕事は、夜でもできるのでなんとかこなせてはいるのですが。

もちろん弊社と同じことが全ての企業にできるわけではないことは承知していますが、人間の心理として「他の仕事で忙しいはずなのに、わざわざ自分に対応してくれた」というのは、予想以上に支持を得る理由になり得ます。私はいわゆる営業ということをしたことがありませんが、それでもそのくらいのことは経験から言えます。

ですからいわゆる大企業の方々には「他社との差別化」の前に、「顧客を差別」してみなさい、と申し上げたい。大っぴらに「弊社は顧客を差別しています」とブログに書く必要はありませんが(笑)、より大きな顧客満足を得たいのなら、一度そのくらいの覚悟で事に当たってみてはいかがでしょうか。

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